キレートジャパンでは創業以来、安全性と効果性の高い商品作りにこだわってまいりました。また、どこよりもいち早く最先端の技術や新原料を化粧品に採用し、化粧品の新しい可能性にチャレンジし続けております。そして最も力を入れている事は、大学との共同研究・開発です。京都大学再生医科学研究所など、薬学だけにとどまらず、医学、工学分野の研究者の研究成果を化粧品にいち早く応用し、弊社の厳しい品質基準をクリアしたものだけを実用化することで、業界に新風を吹き込み、新しいマーケットの創造を目指しております。これからも先鋭の専門家や研究機関と連携し、競争力のある商品開発に努めていきます。「アカデミア×キレート」では、弊社の取り組みや専門知識を分かりやすく皆様にお伝えし、メディカルサイエンスコスメの世界をご紹介していく所存でございます。

01田畑先生は、名実共に日本を代表する再生医療のトップの方であり、研究者です。お会いするまでお医者様とばかり思っていましたが、お名刺をいただきましたら、工学博士、医学博士、薬学博士と3つの博士号をお持ちでびっくりしました。こういうご経歴の教授は、日本でもあまりいらっしゃらないのではないでしょうか?

よく言われます(笑)。私は変わった経歴で、元々スタートは、京都大学の工学部で高分子化学を学びましたが、なぜ高分子を始めたのかというと、プラスチック、ゴム、繊維は高分子の材料で、また元々身体は高分子で出来ているので、高分子から出来ている材料をデザイン出来て作ることができれば、人間に効く新しい治療ができるんじゃないかな…と、高校生の頃から素朴な疑問もあり、それで最初に高分子化学の勉強を始めました。身体と同じ成分で出来ていて、体内で分解・吸収していくものであれば、安全!。そういう材料を作って、実際に身体が元気になる環境作りをしていきたいと思いはじめました。

そこで、体内で吸収する材料を研究し、それらを用いた医療材料(人工血管や人工心臓などの医療のために用いる材料)の開発を進め、工学博士を取りました。体内で用いる、あるいは体の成分(細胞やタンパク質、遺伝子)および細菌、ウイルスなどと触れて用いる材料を生体材料といいます。次に、医学部に進み、大学院は胸部外科に入りました。何故かというと、京大の胸部外科が日本で最初に医用材料を人間に用いた実績があったからです。しかし、当時は材料の生体適合性(体になじむ性質)が完全ではなかったので、うまくいかなかったのが実際です。そこでもっと別の方法で、治療できるものはないか…?と。

そこで、女性の乳房(ガンで取った乳房)の再建する方法を考えました。それまでの乳房の再建は生理食塩水を注入したり、筋肉を盛り上げるようなやり方でした。でもそれでは、本当の再建にはならない。それよりも乳房自体が脂肪で出来ているので、お腹から脂肪を取ってきて乳房を再建出来るのではないかと考えました。脂肪細胞を採取して、それと生体吸収性の材料とを組み合わせ人間の脂肪細胞の塊を作ることに成功したのです。今思い返すと、その乳房の再建が、現在言うところの再生医療の一種だったかもしれません。

もし、今自分がいくら健康で元気でも、食べ物がなかったり、ゆっくり眠ることが出来る家がなかったら、不健康になるし、元気でいられないでしょう? 身体も、そして細胞もそれと同じなのです。だから、細胞を元気にする環境のための材料作りが必要不可欠です。細胞が元気になれば、細胞の能力によって自然治癒力が促され、体は治っていきます。昔、工学部で学んだ材料技術が使えるし、医学部で身体の構造や機能を学んだことが役に立ったのです。

そして、足りなかったのは、薬の知識でした。当然、病気を治すためには薬が必要ですから、薬を勉強するために薬学部で薬学博士を取ったのです。自分が作った生体材料(工学)に薬(薬学)を入れて、それが体内に入ったときにどのような効果を発揮し、作用するのか(医学)…これが私の工学部、医学部、薬学部で博士号を取った答えなのです。私がやりたいことを実際に叶えるには、それぞれの全ての科学的背景がないと出来ないと思い3つの分野を勉強してきました。私が研究した成果を治療に活かし病気を治すこと、そして研究成果を研究だけに終わらせず、企業とタイアップして商品化して世の中に広めて、社会に還元していきたい。最終的に世の中の人を元気に、幸せにする事、それが私の夢なのです。

02京都大学再生医科学研究所では、どのような研究をされていますか?

材料工学や再生医療について研究をしています。私の言う再生医療の定義は、「細胞の持つ自然治癒力を高めて、病気を治す治療法」です。おそらく、皆さんがイメージしている再生医療のイメージと違うのではないですか。

そもそも身体は細胞から出来ていて、細胞は増殖・分化する機能を持っているから身体は元気でいられる。つまり、単純に体内に細胞を入れるだけではなく、細胞が増殖・分化しやすい“環境”を作ってあげることがとても大切ということです。

例えば、細胞を外から入れるという場合…、いくら良い細胞でも、体内に入って1日か数日は効果が持続するかもしれないが、細胞が長期間元気でいる環境を作らなければ、その細胞は死んでしまうのです。そこで、細胞にとってとても大事な細胞の“エサ”(例えば成長因子とか)、そして“エサ”を効率よく食べられ、細胞が休める“家”(ハイドロゲル等)などの環境作りがとても大事になるのです。それを考えなきゃいけない。そのために、身体に触れたり、体内に入れることが出来る安全な材料を作って、ある作用をもった物質と組み合わせ、その物質の作用を最大限に発揮させ、細胞そのものを元気づける技術や方法論…それが私の中での“再生医療”です。その結果、自然治癒力が高まれば病気が治る可能性が格段に上がると思いませんか?

細胞そのものを作る会社はないけど、細胞にエサや家(生体材料)を作る会社はある。つまり、様々な企業とも共同研究していますが、企業が事業として生体材料を取り扱って、我々の研究と企業の開発が合体して効果を発揮すれば、全世界の人々の治療に貢献できるかもしれない。私の研究を企業が応用し、事業開発化して頂けることは非常に嬉しいことです。

03田畑先生が開発された生体マテリアルであるゼラチンハイドロゲルはどのようなもので、どのような効果がありますか?

私が作ったハイドロゲルはゼラチンから出来ています。ゼラチンについては、皆さんが一度は耳にしたことがある馴染み深い材料だと思います。生活にはとても身近なゼラチンではありますが、工学的な立場から言うと、「ゼラチンのような古くから使われている材料を使って何がおもしろいのか?」、また、「もっと新規な機能材料の方がかっこいいのでは?」・・・等、よく言われます(笑)。

ところが医学部へ行くと、利用価値が高く、評価が高いのです。薬剤師が2万人ほど集まる薬剤師学会に招待されたことがありました。発表の後、会長さんから「ゼラチンは薬剤分野では古くからカプセルに使っていたきわめて身近な材料。しかし、身近すぎてその機能には全く気付いていなかった。先生は工学部出身だから、ゼラチンの機能を最大限に引き出すことが可能になった!」と。

ゼラチンにはいろいろな種類がありますが、ある種類のゼラチンを使った時に、細胞を元気にするエサの一種である“growth factor(成長因子)”が徐放(徐々に放出)出来ることが分りました。ゼラチンなんか一般的なものなので、とても特許化できないだろうと思っているとそうではない。特定の種類のゼラチンじゃないと駄目なのです。

“growth factor”を徐放できる性質をもつゼラチンに関する物質特許を私たちはもっています。現在、ゼラチンハイドロゲルの医療用の商品化の準備を進めています。

ハイドロゲルの効果としては、薬を安定化させること、局所に長時間滞留させることが出来るということが挙げられます。これらはDDSと大きな関連性がありますね。

04田畑先生はハイドロゲルを初めとする生体材料を開発し、それを、ある作用をもった物質と組み合わせる技術で再生医療を可能にしてきましたが、その材料によって、どのように細胞を元気づけることができるのか、仕組みをわかりやすく教えていただけますか?

いい質問ですね。その技術概念は「ドラッグデリバリーシステム(DDS)」と言います。先ほどの話の中に出てきましたが、DDSとは、ある作用をもった物質(薬=ドラッグ)と生体材料を組み合わせることで、その物質の効果を最大限に発揮させようという考え方です。

ドラッグの意味を調べると「薬」と「ある作用をもっている物質」と書いてあります。皆さんがイメージする一般的なドラッグとは、薬や治療薬のことですよね。病気の治療には薬が必要ですが、一番重要なのは、治療薬(ドラッグ)をその治療薬が最も効く場所へ届ける(デリバリー)仕組み(システム)作りです。これがDDSです。

DDSには4つの目的があり、1番目は「徐放」。これは薬をその必要部位、局所で長期間にわたって留め、効率よく作用させることです。ドラッグを効かせたい場所で留める。2番目は「安定化」。ドラッグの構造を損なうことなく作用を安定させること、3番目は「バリア通過」。バリアを通過させ浸透度を上げること、4番目は「ターゲティング」で、目的の場所=ターゲットにちゃんとドラッグを届けること、この4つの目的があります。これらの機能が相互的に働き、細胞の自然治癒力を高める手助けをして、病気を治していきます。

これらはあくまでも薬を活用した治療技術ですが、この技術をスキンケアの分野でも活用できるのではないかと考えています。例えば、女性が気にするシミやシワ。これらのターゲットにDDSでドラッグ(ある作用をする物質)を徐放していくことで、局所への滞留時間が長くなり、ドラッグそのものも安定化が出来れば、細胞が元気になる環境が整ってくると思います。お肌への作用は劇的なものになる可能性はあります。

05そうですね。田畑教授のお話を聞いて、今まで自分が当たり前と思っていた常識は、実は間違った理解をしていたことも分かり、新しい情報と先生の研究の成果に目から鱗の連続でした。弊社は化粧品メーカーとして、田畑教授のポリシーである「全ての人を元気に、幸せにしたい」に習い、美を求めてやまない全ての女性を笑顔にし、エイジレスビューティーライフのお手伝いが出来るように努力していきたいと心から思いました。そして、田畑教授のテクノロジーを最大限に活用して、エビデンスに基づいた結果重視の製品作りを今後も続けていきたいと思いました。

大いに期待しています。「病は気から」という言葉がありますが、私は科学者でありますが、科学で解明できないことも日常生活では山ほどあることは理解しています。美容もそうかもしれませんね(笑)。恋愛をすると女性はきれいになるみたいだし(笑)、お気に入りの化粧品を使うとき、「きれいにな~れ、きれいにな~れ」って呪文を唱えながら塗る女性もいるとか・・・(笑)。ほんとかなぁ?って思うこともありますが、キレイになる!元気になる!と思うことにはホルモン分泌や免疫が関与してくる。そういうシステムが全部いい感じになったら、うまく細胞が増えていくのではないでしょうか。

田畑 泰彦 プロフィール

  • 京都大学再生医科学研究所 生体組織工学研究部門生体材料学分野 教授
  • 大阪大学大学院医学研究科 未来医療開発専攻 教授(併任)
  • 京都大学工学博士、京都大学医学博士、京都大学薬学博士取得。
  • 1991~1992年より米国マサチューセッツ工科大学、ハーバード大学医学部外科客員研究員。
  • 1996年生体医療工学研究センター助教授。現職。
職歴、役職歴
  • 平成8年7月16日 京都大学生体医療工学研究センター助教授任官
  • 平成10年4月9日 京都大学再生医科学研究所助教授任官
  • 平成12年3月16日 京都大学再生医科学研究所教授任官
  • 平成13年4月1日 大阪大学大学院医学系研究科未来医療開発専攻教授任官
  • 平成20年4月1日 日本歯科大学客員教授
  • 平成13年5月1日~ 平成16年3月31日日本再生医療学会広報国際委員会委員長
  • 平成13年5月1日~ 財団法人生産開発科学研究所 学術顧問
  • 平成13年6月13日~ 財団法人武田計測先端知財団 生命系武田研究奨励賞座長
  • 平成14年3月2日~ 遺伝子医療研究会世話人
  • 平成15年9月13日~ 硬組織再生生物学会副理事長
  • 平成19 年3 月15日~ Bioconjugate Chemistry 副編集長
賞罰
  • 平成 2年10月12日 日本バイオマテリアル学会賞(科学奨励賞)授賞
  • 平成14年11月29日 日本バイオマテリアル学会賞授賞
共同受賞
  • 平成13年7月14日 第5回心臓血管病学カンファランス 若手研究奨励賞
  • 平成13年12月4日 武田計測知財団 研究奨励賞 優秀研究賞
  • 平成14年4月18日 第1回日本再生医療学会総会 優秀演題賞 2題
  • 平成14年7月12日 第11回日本泌尿器科学会 会長賞(基礎研究部門最優秀演題)
専門分野
  • 生体材料、生体吸収性高分子、生体組織工学(Tissue Engineering)、DDS、幹細胞工学